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旧産業地帯『ブラウンフィールド』の再開発による商業の活性化

米国中の大都市は今、ブラウンフィールドと呼ばれる汚染された産業・工業地帯を浄化し、新しく活気のある経済機会へと転換する動きが高まっている。

米環境保護庁(EPA)によると、ブラウンフィールドとは、危険物質や汚染物質の存在、もしくは潜在的存在によって、不動産利用、またその拡張や再開発、再利用が困難になっている地域、と定義されている。経済的に行き詰まっている旧市街地で良く見られるものだが、このような地域はしばしば、過去の汚染行為による責任問題をおそれた開発者から見放され、荒廃したまま放置されている。

1995年1月、EPAは、旧市街地などのブラウンフィールドの再開発を促すため、ブラウンフィールド法を制定した。同法の最終的な目標は、より安全でクリーンな環境づくり、雇用促進、財産税増収、何千エーカーもの未開発地の保全、そして既に利用中の土地に関する土地利用計画の改善である。

EPAは、全米の州政府や地方自治体向けに、汚染地を浄化にするための様々な財政支援プログラムを提供している。ここでいう浄化には、アスベストのような有害建築材料の除去の他、有害土壌の除去、入れ替えも含まれる。

いち早く成功事例を築いたのは、シアトル市である。同市は汚染された産業地帯をオフィス街やショッピングセンターに転換した。かつては汚染されたことのある、中心のサウス・レイク・ユニオン地区は再生され、640万平方フィートものオフィス、商業、住宅の複合地域になっている。またシアトル市は、マイクロソフト社の共同創業者であるポール・アレン氏と協働し、公共施設の改善や新たな路面電車の建設といった、一連の改善を2004年から始めている。結果、2010年時点で、サウス・レイク・ユニオン地区に約1万4千の雇用が産み出されている。

ニューヨーク州ローマ市では、事業費20万ドルのブラウンフィールドのパイロット事業として始まったものが、今ではEPAの浄化・再開発補助金4百万ドルを動かす大規模な再開発事業の成功事例となっている。この4百万ドルの使途は、イースト・ローマ・ビジネス・パークに続く新規道路完成のための汚染浄化や再開発、17エーカーの中核的な市街地の回復と汚染浄化である。この市街地は6つの地区に分割され、開発の準備が整っている。新規、既存を問わず、ビジネスの中心はビジネス・パークに移動する傾向が生まれている。このような商業拡張や新規ビジネスの参入は、市の税収拡大と雇用創出に多大な影響をもたらすことだろう。

EPAのブラウンフィールド財政支援プログラムは、多くの成果を生んでいる。全米に45万あるというブラウンフィールドのうち、これまでに6万が同プログラムを利用して汚染浄化されており、その財源は再開発や雇用創出に大いに活用されている。ブラウンフィールドプログラムと、その官民双方の関係団体は、『汚染地を活気ある生活・労働の場に転換する力を地域に与える一方で、経済再活性化の指針とインセンティブを提供する』という不朽の遺産を残しつつある。

2011年9月12日

執筆:Stephen Fasano, Senior Researcher