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フレッシュキルズパーク~埋立処分場からニューヨークを象徴する公園に~

2012年8月17日

21世紀のニューヨークを象徴する公園

現在、マンハッタンの南、スタテン島においてフレッシュキルズパークが建設中です。完成時にはセントラルパークの約3倍、2,200エーカー(890ヘクタール)の面積を有する巨大な公園となります。セントラルパークがこれまでのニューヨークの象徴だとすれば、フレッシュキルズパークは21世紀のニューヨークの象徴となる公園になると言われています。

それは、同公園でマウンテンバイク、カヤック、乗馬といった、都市では珍しいレクレーションが楽しめるからだけではありません。地球環境が人類に与える影響を認識し、持続可能性を重視する公園のあり方そのものが、今日のニューヨーク市民の価値観を体現するものとなるからなのです。

フレッシュキルズ公園完成予想イメージ図

埋立処分場から公園に

かつて豊かな湿地帯であったフレッシュキルズは、1948年に初めて埋立処分場としての利用が開始されました。ピーク時の1986年と87年には、世界最大の埋立処分場として毎日29,000トンの廃棄物を受け入れ、「無駄」「過剰」「環境無視」といった言葉がフレッシュキルズの代名詞とされていました。しかし1996年に成立したニューヨーク州法により、2001年での廃止が決定し、埋立処分場としての歴史に終止符を打ったのです。

敷地全体の45%近くが埋立処分場として使用されたフレッシュキルズですが、処分場の閉鎖後は、湿地、塩沼、潮汐の通り道として、また、何百の動植物の生息地として蘇ろうとしています。本来の湿地帯そのままの姿に戻ることはできないでしょうが、公園として開発されることで市民の憩いの場としての新たな道を歩み出そうとしているのです。

パブリックツアー

説明するパークレンジャー

遠くマンハッタンの摩天楼を望む

ニューヨーク市公園リクレーション局は、毎月1回、フレッシュキルズのパブリックツアーを開催しています。市民は実際の公園予定地を訪れ、パーク・レンジャーからフレッシュキルズの過去・現在・将来の説明を聞くことができます。ツアーの集合場所までは、マンハッタンから地下鉄、フェリー、路線バスを乗り継ぎ2時間半掛かり、ちょっとした小旅行です。

ツアーの所要時間は約1時間半で、南園と北園ではバスから降りて360度の眺望を楽しむことができます。南北はマンハッタンの南端から26丁目まで、東西はイーストリバーとハドソン川までに匹敵する面積だと説明するレンジャーの話と、目の前に広がる広大な公園予定地に、改めてその規模を実感しました。

自然と都市生活の融合

埋立処分場を生産的で美しい文化の場所に変貌させるというフレシュキルズパークの整備計画は、土地の再生、景観のバランスや生態系の復元について世界中に手本を示すことになるでしょう。公園を訪れる人々は、水と緑に囲まれた都会のオアシスを楽しむと同時に、人類が地球環境に及ぼす影響と持続可能性についての知識も学ぶことができるのです。

150年以上前、セントラルパークはニューヨーク市民の生活に自然をもたらしました。フレッシュキルズパークは21世紀のニューヨーク市民に、自然と都市生活を融合させる、魅力的なレクレーション活動に満ちた新しい公園の姿を示すことでしょう。

ニューヨーク事務所次長 園原 隆(東京都派遣)