クレアでは、世界中から選ばれた12 名のJETプログラム(外国青年招致事業)同窓生(以下、「JET経験者」という。)が日本を再訪し、ミニ国際会議への参加や、かつての赴任自治体(以下、「元任用団体」という。)との交流を行う事業を11月に実施します。この事業に対し、北米では、わずか4週間弱の公募期間に、定員3名の55倍にあたる応募者から熱い想いが寄せられました。今回は、ニューヨーク事務所における本事業の広報から参加者の募集、候補者選定までの一連の取り組みについてご紹介したいと思います。
1.JETプログラム経験者里帰り事業とは
JETプログラム経験者里帰り事業とは、その名のとおり、JET経験者が、元任用団体を再訪する企画を一つの目玉としている事業です。参加者は、自ら企画した「里帰りプラン」に基づき、自治体や地域の人々との交流を深め、SNS等を通じて日本の地域の魅力を世界に発信します。
また、一方でこの事業には、国代表を始めとする、JETプログラム同窓会(以下、「JETAA」という。)の活動を積極的に行っている人たちが参加するため、各々の活動事例紹介や、来年2016年のJETプログラム30周年記念事業に関する意見交換等を行う、ミニ国際会議が同時に開催されることとなっています。
2.参加者を募集!北米のJET経験者の反応は
本事業は、世界中から12名のJET経験者の参加が予定されていますが、当事務所管轄地域である北米からは、そのうち3名が選出されることとなっています。しかし、全世界におけるJET経験者60,000人強のうち、その半数以上が北米からの参加です。また、JETAA全米組織設立の動きからも見られるとおり、アメリカではJETAAの活動は盛んであることから、この事業へのJET経験者の関心の高さや多数の応募は、当初から予想されているところでした。
参加者募集については、6月にオタワで開催されたJETAAカナダ会議における事業概要説明、事務所Facebookページやウェブサイトでの周知に加え、JETAAの国代表等のネットワークを通じて、JETWit 、JETAAUSAのメールマガジンなどでの広報により行いました。JET経験者のネットワークは素晴らしく、各種SNS等で瞬く間に情報が拡散されてゆき、募集開始の翌日から連日、電話及びメールでの問い合わせが多く寄せられました。そして、締切当日まで申請書の提出は相次ぎ、蓋を開けてみると、アメリカから122名、カナダから43名の合計165名からの応募がありました。
3.申請書から垣間見えたもの
申請者の職業は、政府関係機関勤務や教師、写真家、ジャーナリスト、Googleなどの有名企業勤務や映画制作者など千差万別で、JETプログラムという一つの事業で日本に関わった人たちがこのように多方面で活躍しているという事実を改めて確認できました。
また、申請書には、JETAAや日系機関等からの本人への推薦状を任意で添付することができましたが、そのどれもが、決してひな形へ代表者がサインするだけというものではなく、文字通り、この人を推したい、という想いが込められた内容のものでした。とりわけ、JETAAからの推薦状は、申請者一人ひとりの活動や趣味・特技などが詳細に記された上で太鼓判を押されているものであったため、JETAA内でのメンバー同士の結びつきの強さも感じられました。また、元任用団体からの推薦状をもらった申請者もおり、元任用団体との継続した交流を行っているJET経験者の存在も見受けられました。
4.悩ましい候補者選定
審査をするにあたり、重要視すべきポイントを大きく分けて2つ設けました。JETAAへの貢献度が一つと、もう一つは、申請者が元任用団体に里帰りした際にどのようなことをして、帰国後はどのように交流するかといったことを自身で企画する「里帰りプラン」です。この両方が充実している人を選ぶという作業でした。
「里帰りプラン」については、企画そのものの内容に加え、本事業の重要な趣旨の一つである、その企画を通していかに日本を世界に発信するかという、情報発信力も評価の対象としました。次に、興味深かったものをいくつか挙げてみます。
- 「ジオキャッシング 」という世界共通で行われているGPSを利用した宝探しゲームを通して、学生たちが、学んだ英語を駆使しながら、海外のコミュニティと交流するととも に、自らの住む街もPRできるという企画。
- 日本で有名な日本人YouTuber である友人(英語学習や日本文化紹介に関するコンテンツ を配信している)に協力してもらい、地域での交流の様子を世界に配信してもらうという 企画。
- 写真と声(ことば)を通して地域社会の状況や課題等を社会に発信する「フォトボイス」 という手法を用いて、学生たちが自分たちの住む街について考え、英語でプレゼンテー ションを行い、その様子を動画撮影・発信するという企画。
- 地域の伝統文化に関する短編映画を制作しオンラインで配信するという企画。
短編映画制作もそうですが、申請者自身の特技を生かすという候補者も多く見られました。日本のテレビ番組などのメディア出演経歴や、自分のSNSにおける読者の多さについて示したり、4ヶ国語を操ることができるということを強みにするなどして、情報発信力をアピールする人も多く見られました。
このように、優れた人材やアイデアが溢れている中で、私たちは前述の審査ポイントを頼りに、総合的にみて候補者を選出しなければなりませんでした。JETAAの活動は少ないが「里帰りプラン」はとても興味深いなど、一部がとても優れている人を見つけるとすごく悔しい思いがしました。また、アイデアとアイデア、この人とこの人をつないだら面白いものができるのでは、など、165名を並べてみると、相乗効果が期待できそうなものも見受けられました。いずれにせよ、3人という枠はやはり狭き門だと感じざるを得ませんでした。最終的に、当事務所は、アメリカとカナダの国代表各1名を含む計5名の申請者を候補者として選抜しました。
そしてそれから数週間後、本部において3名の候補者が参加者として決定されました。彼らは、北米の代表として11月に本事業で訪日しますが、その様子は、様々な媒体を通じて周知されるでしょう。Facebookを始めとするSNS上において、CLAIRメールマガジン読者の方々も目にされるかもしれません。筆者もまた続報をお届けしたいと思います。
審査会の様子
5.一連の取り組みを通じて
本事業については、JET経験者が参加する各種イベントにおいても、話題に上ることが多くありました。「自分の申請書は読んでくれたか?わからないところがあったらいつでも解説するよ。」「いつ結果がわかるんだ?」などと様々なことを聞かれましたが、皆口を揃えたのは、「この事業は来年もあるのか?」「もっと多くの人が行けるようにしてほしい。」というものでした。もちろん、ほとんどタダで日本に行ける、というフリーライダーのような人がいないわけではないでしょうが、ひとまずそれを脇に置いておいたとして、どんな職業に就いていても、どんな経歴の人でも、JETプログラムの経験を踏まえた上で、それ以降の人生の中で、日本に関わることがしたいという気持ちを持ち続けてくれているとは何と素晴らしいことかと感じます。
一担当としては、今年の結果を踏まえた上で、翌年度のJETプログラム30周年において、JET経験者数の割合に応じた参加者数の確保などを盛り込み、更に充実した内容で、本事業のような交流事業が実施されるよう願うところです。また、この一JET経験者と日本の一地域との交流における草の根の情報発信は、継続して実施され、広く人の目に触れるようになれば、JETプログラムの認知度や参加者の質の向上に貢献するだけでなく、行政として手の届きにくい部分における地域活性化の一助にもなるでしょう。
まずは、今回のこの大きな反響に見合うだけの成果があがるよう、事業成功に向けて取り組んでいくと共に、参加者以外の今回の応募者に対するフォローアップも図っていきたいと思います。
丸野所長補佐 和歌山県派遣