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ニューヨークの町内会「Neighborhood Associations」について

 ニューヨーク・マンハッタンの街は、 Street(縦)とAvenue(横)による碁盤目の形になっており、一般的に、Streetは南から北へ、Avenueは東から西へ進むにつれ番号が増えていく(又は通りに名前が付いている)。そのため、目的地の通りの番号や名前さえ頭に入れておけば道に迷うことはなく、タクシーに乗るときなども、目的地の場所を伝えるよりも、「50th Street and 5th Avenue」などと伝えたほうが、確実な場合が多い。

 このStreetとAvenueを基準として、マンハッタンの中では、数多くの「町内会」が熱心な活動を行っている。

 一般的に、それは「Neighborhood Association」という名称で、一定地域に居住している住民等による任意加入のボランタリーな組織として運営されている。

 また、生活の質に関わる問題に対処することを第一の目的としているところが多く、具体的には、住宅、ゴミ、道路、交通問題(渋滞とスピード違反)、治安などに関わる問題について住民の意見をまとめ、市役所と話し合いを行っている。その他、美化活動や地域の親睦活動(ピクニック、ハロウィン・パレードなど)も実施している。

 日本の多くの自治体が、市の広報誌等の配布・回覧、自主防災組織の運営と活動、資源回収等など、コミュニティ・サービスの提供を町内会にお願いしている事情とは異なり、「Neighborhood Association」は、そのようなコミュニティ・サービスを提供しておらず、市役所からの独立性を保つため、補助金などの金銭的支援を受けていないというところも多い。

 例えば、事務所が位置する地域では、「The Murray Hill Neighborhood Association」という団体が活動しているが、主に彼らは、区内にある歴史的建造物等の保護、緑化・美化活動、親睦会の企画や運営、区内のルール(ゴミの処理、ペットの扱い等)についての情報発信等を行っている。このうち、歴史的建造物等の保護については、単なる美化活動に留まらず、例えば、区内にある施設の一部を市のランドマークとして指定するよう各関係機関に働きかける活動も行っている。

・実際に市のランドマークとして登録された「Lobby at 200 Madison Avenue」

 この団体に加入するためには、年会費を支払う必要があり、具体的には、個人(1名)で参加する場合は、$35(ただし、40歳以下$25、65歳以上$20)、2名で同時に参加する場合には、2名で$50(ただし、65歳以上は2名で$40)を支払う必要がある。また、企業として参加することも可能であり、1~9名の企業は$60、10~24名の企業は$100、25名以上の企業は$250を納めれば、加入することができる。

 加入した後のベネフィットも準備されており、例えば個人で参加した場合、団体が発行するニュースレター(印刷物とデジタル形式)の購読、地元の店舗やレストランの割引等がある。また、各企業は団体が発行するニュースレターへの広告掲載料の割引や加入者に対し特別オファーを提供するFacebookへの投稿が年1回認められるようになる。

 

 マンハッタンの街を歩いてみると、地区のボランティアと思われる人たちがゴミ拾いを行っていたり、イベントの手伝いをしている姿を何度も見かける。また、道路沿いの花壇に植えられている花々もしっかりと手入れされており、季節が変わると違う種類のものにいつの間にか変わっている。

 日本の感覚からすれば、年会費を払ってまで、このような活動に参加したくないと思う人が多いかもしれないが、むしろ、アメリカでは、自分たちの住む地域の生活の質は、自分たちが維持・改善していくんだという意識が当たり前のようにある。

 そのため、行政側からの働きかけを待つのではなく、年会費等による活動資金を自分たちの力で集め、自分たちで改善できるところは自分たちで行い、どうしても解決しないときに行政に相談するというスタンスを取っている。

 アメリカでは、住民自治が広く認められ、その活動が地方自治の基盤となっていることが多いが、このような町内会の在り方一つを取ってみても、改めて、住民自治とは何か、を考えるきっかけとなる。

(柿本所長補佐 総務省派遣)