去る6月上旬にニューヨーク市危機管理局(OEM / Office of Emergency Management)が開催した「ハリケーンの災害対策と防災計画」の説明会では、説明会の終了後に懇談会も行われ、市民への有効な伝達方法について議論が行われました。
OEMは、6月18日に新しい避難区域を発表する前からハリケーンに対する防災意識啓発の戦略を練っており、上述の懇談会は地域で防災活動に携わっている人たちの意見を取り入れる機会となったようです。懇談会では、OEMが作成した避難区域などを掲載したパンフレットを各世帯に送付するだけでは防災情報や避難情報を住民に十分に伝達することができない、といった心配があげられました。
また、住民との言葉の壁についても課題として取り上げられました。沿岸地域など、ハリケーン襲来時に避難が必要な地域では、多くの住民が英語圏以外からの移民であるため英語があまり話せません。そのため、薬局や移民向けのスーパーなどから協力を得て、パンフレットの配付や避難情報の説明を依頼することもあるようです。
この他にも、サンディの襲来時に洪水被害を受けた地区で、その洪水の到達地点にマーキングをすれば視覚的に印象に残るのではないか、といったアイデアも出されました。
OEMが作成した避難情報パンフレットは、英語以外にスぺイン語・中国語(簡体字)・アラビア語・ウルドゥー語・イディッシュ語・ロシア語・ベンガル語・イタリア語・韓国語・クリオール語・ポーランド語に翻訳され、ホームページに掲載されています。各世帯にパンフレットを送付して避難情報を伝達するほか、市内の商業地区やコミュニティセンターとの連携を通じた避難情報の周知も予定されています。
このように、今後ニューヨーク市では、OEMと非営利団体との協力による避難情報の伝達が進められていく見込みです。
Matthew Gillam
Senior Researcher
2013年9月