2014年6月10日より、ニューヨーク市の緊急事態管理室(Office of Emergency Management(OEM))と設計建設局(Department of Design and Construction(DDC))は、全米初となる災害用仮設住宅の試作品を公開しています。
先日、当事務所のスタッフもOEMのDisaster Housing Recovery Plan Manager である Ms. Cynthia Barton氏らにご協力をいただき、ニューヨーク市ブルックリン区に所在するOEMの本部庁舎を訪問して、庁舎の真裏に建てられている試作品を見学することができました。
試作品は3世帯用の3階建てとなっており、1階及び2階部分は3LDK(約75.0㎡)、3階部分は1LDK(約45.0㎡)という間取りです。驚くことに、各世帯にキッチン、シャワー、トイレのほかリビングルームまで完備されています。また、エアコン、ダイニングテーブル、ベッド、テレビ、ソファ、冷蔵庫、電子レンジ、オーブンといった生活に必要な家具も一通り備え付けられており、写真を見ただけではホテルの部屋と勘違いしてしまうほどです。さらに、室内は完全バリアフリーとなっており、車椅子の方が不自由なく生活できるように室内の幅と高さが調節されています。強いて足りないものを挙げるならば、エレベーターのような2階以上へのアクセスを容易にする設備でしょうか。
試作品を3階建てにした理由は、人口の割に土地が狭く仮設住宅を設置する場所が確保しづらいというニューヨーク市独自の問題点を解決するためです。実のところ、こうした3階建ての仮設住宅は既に日本でも利用されています。
宮城県女川町では、東日本大震災の影響で約7割の住宅が全壊又は大規模半壊となりました。リアス式海岸が続き平らな土地が少ない同町は、必要な数の住宅を提供するために、2011年11月より日本で初となる3階建ての仮設住宅を提供しています。当日案内をしてくれたOEMの担当者によると、今回の試作品を作成する上で同町のモデルも参考にされたそうです。ちなみに、ニューヨーク市では法律により、エレベーターを備え付けていない建物は4階部分までしか建設することができません。
OEMでは今後、災害用仮設住宅のさらなる進歩を図るために、実際に職員を数日間仮設住宅で生活させることを計画しているそうです。また、ゆくゆくは仮設住宅の体験ツアーという形で、関心のある市民にも仮設住宅での生活を体験してもらうことを検討しているそうです。
試作品の建築を担当したAmerican Manufactured Structures and Serviceのウェブサイトでは設計図などが公開されています。興味のある方は是非ご覧下さい。
所長補佐 松重