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電気自転車-将来のトレンドか?社会の迷惑か?

電気自転車-将来のトレンドか?社会の迷惑か?ニューヨーク市当局が対策に乗り出す。

電気自転車、またの名をe-自転車と呼ばれる乗り物が当局にとって頭痛の種となっている。騒音や大気汚染の無い環境に優しそうな(少なくともそのようにみなされるべき)乗り物であり、またそれ以上に、レストランや宅配業者といった配達人に頼る業種にとっては恩恵をもたらす乗り物ではあるが、一方で、現在の法律がこの新しい乗り物に追いついておらず、公道での走行が認められていない。果たして何がなされるべきなのだろうか?

そもそもe-自転車とはなんだろうか?本質的にはバッテリーでモーターを駆動する自転車で、自転車のように操縦する乗り物だ。あるいは、(米国の)大人なら小さいころからなじみのあるスクーターに電動モーターを載せて楽に移動できるようにした乗り物、ということができるかもしれない。

ニューヨーク州の法律では、e-自転車は「モーター駆動付き自転車」と定義され(訳注:日本の電動アシスト付き自転車のように自分でペダルをこがなければ進まないものも含まれる)、公道での走行が認められていない。一方で、足でペダルをこぐ普通の自転車は走行が認められている。たとえば、もし、自転車にカゴを取り付け、お腹を空かせて待ちわびているお客さんに料理を配達しているのであれば法に触れることは無いのだが、疲れた足を楽にしたいため「モーター駆動付き自転車」にバッテリーとカゴを取り付け、同じ料理をお腹をすかせて待ちわびているお客さんに配達するとしたら、それは法に抵触するのだ!

もちろん、皆が言うように、ニューヨーク市では「モーター駆動」ではない自転車も、電動アシスト付き自転車も、自動車の入っていくことが容易ではない歩道や道路を往来している。仕事であろうと単純なプライベートであろうと、あらゆる意味での「自転車」が歩道を歩く上で邪魔になると、ニューヨーカーはすぐに文句を言ってくる。そしてさらには、配達人だけが電気自転車を購入するわけではない。ニューヨーク・タイムズの記事によると、通勤客(もちろん地元ニューヨークに住んでいる人たちなのだが)が会社に早く楽に行くことのできる手段を見つけたと、興奮しているのだ。

当然、当局の電気自転車に対する規制を強める結果となってしまった。ニューヨーク市では、規制強化への第一歩として、市全体で59あるコミュニティ・ボードや、警察署の管轄地域を助言する警察管区コミュニティ会議において問題提起が行われた。その結果、たとえば、クイーンズ区にあるフォレスト・ヒルズ地区やレゴ・パーク地区では、警察管区コミュニティ会議のメンバーが、特にe-自転車が原因となる「違法な」自転車走行を規制する法令の内容とこれに基づく取締りについて、警察への「教育」を強化するよう強く要求した。また、アッパー・イーストサイド地区のあるコミュニティ・ボードでは、地元選出の公選職に対しe-自転車を自動車同様に取り扱い、車両登録させるよう求める決議を行った。

興味深いことに、ニューヨーク州議会では正反対の方向に動いている。実際のところ、州議会では電気自転車を、仕様によっては通常の自転車と同様に位置づけている連邦政府の指定方法に合わせる方向であるという。つまり、法律用語で言うと、自動車安全基準の目的において、電気自転車を自動車と同じ位置づけから除外するということになる。すでに法案は州議会下院を通過し、州議会上院での審議を迎えることとなっている。新たな市街地移動手段としての電気自転車の出現が、「街中の移動」について苦慮している都市や都市の住民にとって将来の大きな関心事となるのは確かだろう。

参考

  • 2009年10月23日 ニューヨークタイムズ
  • 2011年5月17日 ウォール・ストリート・ジャーナル)

執筆:Seth Benjamin, Senior Researcher

訳:鈴木所長補佐