昨年末、現在教官として勤務されている米澤氏のお招きにより、ニューヨーク州ウエストポイントにある陸軍士官学校を訪問しました。米澤氏は、防衛省から同学校に派遣されています。
1 米陸軍士官学校の概要 米陸軍士官学校は、かの独立戦争の際にハドソン川の西側に位置する重要な軍事基地の一つであった場所に建てられたことから通称ウェストポイントと呼ばれています。
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3 日本語講座の開講に向けて 米国にある陸軍士官学校、海軍士官学校、空軍士官学校の中で日本語を教えていないのは実は陸軍士官学校だけです。このことは、将来の軍のリーダー、国家のリーダーとなる陸軍士官候補生にとって、「日本」について学ぶことができる機会が限定的であることを意味し、日米双方の陸軍にとって「日本について知る機会がない」ことが問題となっているとのことです。 そこで、まずは2012年から米澤教官のような交換幹部が派遣され専門課程の授業を行いながら、その傍ら、課外活動として日本語教育を行い(10名~20名/年)日本について「知る機会を提供」しています。しかし、課外活動は単位取得とは関係がないため参加意欲は低いのが現状です。将来的には日本語講座の開講を目指しており、海軍や空軍のように年間約100名程度が日本語講座を受講することで、日本を知る士官候補生を増やし、米国のリーダーとなる若者の中に知日派を育成し、日本の国益増進に寄与することを目指しています。
4 古き良き伝統の継承 今回米陸軍士官学校を訪問する機会を通じて印象的だったことは、校内に、歴代のマッカーサー元帥やアイゼンハワー大統領らのカレッジリング(英語では、classification ringといい、任官/卒業を記念して作られるもの)が展示されており、敷地内には、「BEAT NAVY TUNNEL(海軍を倒せ)」と書かれたトンネルにライバルの海軍とのアメフト戦の記念パネルが展示されているなど古き良き伝統を大切にしていることです。 卒業後の5年間は、軍人(卒業時陸軍少尉が与えられる)として働かなければなりませんが、その後、多くの卒業生は、中途退役し政府・企業に再就職しており、政財界に幅広く先輩、同級生、後輩に至る卒業生の強固なネットワークを形成しています。この強固なネットワークは、伝統ある学校で全寮生活の中で培った仲間との絆そのものなのではないでしょうか。
(桜井所長補佐 警視庁派遣)